ルビスコくんの日記

とある博士学生の日記です。

帰れない二人

僕は井上陽水の「帰れない二人」という曲が好きだ。僕の叔父は井上陽水のファンで、高校生のころにこの曲が入っている「氷の世界」を貸してもらって以来、ことあるごとに聴いている。

この曲は作曲が忌野清志郎で、作詞を井上陽水が担当しているのだが、さすが井上陽水。もう、情景描写が素晴らしすぎる(帰れない二人 井上陽水 - 歌詞タイム)。

(最終列車を逃したのか、)帰れなくなって手をつないで夜明けを待つ恋人たち。明け方になると夜露が降りてきて、寒さで震えながら話をしている。

描かれているシーンとしてはこれだけなのだけど、本当にうまい仕掛けが施されている。

「僕は君をと いいかけたとき 街の明かりが消えました
 もう星は帰ろうとしている  帰れない二人を残して」

歌詞の冒頭は恋人たちの描写なのだが、街灯が消える、という一瞬の出来事をさかいに、そこから一気に視点が切り替わって、星空の描写になる。地球の自転と恒星の光という半永久的な時間軸と、恋(あるいは人間?)という儚い、とても短い時間軸の対比。そして星たちは薄明かりの向こうへと消えていく。

そう、詩っていうのは、「恋は儚い」とか直接的な表現をするのではなく、本来こんな風に情景描写をしたり視点を切り替えたりと、言葉と工夫を尽くして描くものなんじゃないかな、と思わせてくれる。もちろん「好き」とか「会いたい」とか、ストレートな歌詞でも僕が好きな曲はたくさんある。けれど、やっぱり詩としては僕は「愛してる」よりも「月がきれいですね」派です。

「帰れない二人」は、メロディーもこの歌詞にとてもあっていて、切なくて澄んだ一曲なので、是非聴いてみてほしいです。